2019/02/13 11:00

芸能人セーターブック史を探るため あの「日本ヴォーグ社」に潜入した!

 1980年代から1990年代にかけて流行した「セーターブック(SB)」を覚えていますか? 編み図と共に人気モデルや駆け出しの若手俳優が鮮やかで個性的なセーターを身にまとった写真実用書です。青春のほの甘い記憶と共に、SB愛好会の3人が今振り返ります!


セーターブックの元祖は
「いいとも青年隊」のあの人!


 1月某日。我らが向かったのは東京・中野区にある、手芸の実用書でおなじみ「日本ヴォーグ社」。

 セーターブック(以下SB)連載を始めるにあたり、実際に制作を手がけていたスタッフの方にお話を聞く夢のような機会に恵まれた。嗚呼、胸の高鳴りは止まらず。

 今回、お話をうかがったのは日本ヴォーグ社事業本部 出版・企画開発部長の今ひろ子さん。


 1980~90年代にセーター関連の実用書の編集制作を手がけていた方。ご多忙の中、我々の偏った愛情を受け止めて頂き、本当に感謝しかない。中野方面には足を向けて寝られない。

 時は遡り、女性が趣味や習いごとに時間もお金も費やせるようになってきた1980年代半ば。

 女性の趣味ランキングで編みものがトップであったこの頃は、並行して女性が恋愛に積極的になりつつある時代でもあった。

 そこで、趣味として人気があった編み物の延長上に「家族や彼氏に何かあげたい願望」がプラスされ、男性に「手編みのニットをプレゼントしよう」という文化が流行し出す。

 そのタイミングで1984年9月、日本ヴォーグ社から誕生したのが「セーターボーイ」なる手編みセーターの実用書だ。

 前半は著名人(主に若い男子)がセーターを着用したグラビア、後半は実用的な編み図という構成になっており、どのような毛糸を使用すべきか、など、編みもの初心者にも優しい内容になっている。


満を持して誕生した「セーターボーイ」(日本ヴォーグ社)。ド直球のタイトルがとても心地良い。

「セーターボーイ」の表紙を飾ったのは、当時、初代いいとも青年隊として活躍中だった野々村真。

 世の中の反応も好評だったということで、その後もこのシリーズは続くことになるのだが、当時、人気タレントを起用したきっかけについて訊ねた。

「1954年の創業当時からたくさんの実用書を手がけているのですが、初期の頃から俳優さんや女優さんに力をお借りしてモデルになっていただくことが多く、例えば、原節子さんや久我美子さん、石原裕次郎さんなどにも登場してもらいました。そういった背景があったので、新たに出版することになった『セーターボーイ』に人気の若いタレントさんを起用する流れも自然なことでした。よく見ると今も活躍している著名な方の姿を見つけることができますよ」


今では毒舌司会者としておなじみの坂上忍も元セーターボーイ!

 数冊の「セーターボーイ」を眺めてみるとそこには知ってる顔が! 名前も知らぬモデルが着用しているよりも、テレビや雑誌で親しみのある誰かが着ているほうが編み手としても親近感がアップするし、やる気も出そう。

 そして、“編み物をしない単純なファン”の購入を望むこともできて、出版社にとってもメリットが。

 その発想がその後、90年代に多数出版される、写真集的要素を大いに含んだ“冠本”(と呼ばれている)こと、書籍名に個人の名前が入った『●●●●が着るセーターブック』の誕生につながったのではなかろうか。

約12万部を売り上げた
伝説のセーターブックとは?

 日本ヴォーグ社が手がけたSBの中で、最も売れたのは誰のSBなのだろうか。

「ざっくりとした情報でいいのなら」というお言葉と共に、こちらの予想を覆す、それはそれは意外な人の名前が飛び出した。

「正確な数字は申し上げられないのですが、私が関わった作品の中で一番売れたのは、1987年に作った小堺一機くんの『小堺クンのおしゃれ手あみ all that kosakai』ですね。だいたい12万部。さらに追加して刷ったと記憶しています。今考えるとすごい部数ですよね。小堺くんは撮影時、ポーズでも何でも、とてもたくさんアイデアを出してくれました。“楽しげな誌面にしましょう!”と、とても協力的な方で、楽しい撮影だった記憶が今でも残っています」


かっこいいというより可愛いイメージのSB。もちろん「アクロン(ライオン)」の広告も。「アクロンなら毛糸洗いに自信が持てます」のフレーズが懐かしい。

写真の左下に見えるのが、『小堺クンのおしゃれ手あみ all that kosakai』。カラフルでレイアウトもおしゃれだ。

 数多の俳優やモデルを差し置いてのナンバーワン。そしてその売上部数に、我々SB愛好会の3人は驚きを隠せず。

 すでに「ライオンのいただきます」(フジテレビ)の司会で“お昼の顔”としてお茶の間の人気者だったとはいえ、やはり驚異的な数字だ。

日本ヴォーグ社が手がけた
セーターブック(の一部)をご紹介




今では映画やドラマなどで活躍するあの人たちもみんなSB育ち! 左から:『オダギリ ジョー SWEATER BOOK』『織田裕二 Knit Book』『竹野内豊 OUTDOOR SWEATER すごーくかんたん彼のセーター』(すべて日本ヴォーグ社)。




SBの世界はジャンルレス! 左から:『男のセーター・クラブ VOL.3』『森脇健児セーターブック KENJIの極楽ニット集』『AKAI 赤井英和SWEATERS』(すべて日本ヴォーグ社)。

時代の流れと共に消えた
有名人のセーターブック

 ”小堺クン”のSBが10万部以上の売上を記録した時代を経て、かつては大量に出版されていた著名人が登場するSBは、時代の流れと共にパッタリと見ることがなくなり、現在ではほぼ全滅。

 SB愛好者たちの胸の中で長年の間、疼いていた「どうしてSBは無くなってしまったのだろう?」という疑問についても、デリケートな内容ではあるが訊ねてみた。

「今でも手編みの実用書は出版されているんですよ。ただ、やはり暖房器具や温暖化(暖冬)の影響を受けて、手編みのセーターを着る人が減ったこと。それと既製品のニットの品質が向上し、手編みではなくても、わりと手ごろなお値段でニット製品を購入できるようになったことの影響も大いにありますね」

 なるほど、納得。暖冬の影響というのが実にリアル。手間もお金もかかる手編みのニットから、品質が向上した既製品のニット主体へ世の中の主流が変わっていった。時代は常に動いているのだ。

 また、日本ヴォーグ社と同時期に、個性溢れるアイデアに富んだ(これを我らは勝手に「ONDORISM」と呼んでいる)SBをたくさん世に出していた、手芸実用書の老舗、雄鶏社の倒産(2009年)については……。

「衝撃的でしたね。同じように手芸書を手がけていたライバル会社でしたが、それと同時に“盟友”という気持ちがあったので、まさかあのようになってしまうとは思ってもみませんでした」

 同じようにSBを手がけていた雄鶏社を「盟友」と呼ぶ今さんを見て、思わず胸がジーンとしてしまった。ライバルであり盟友……、素敵だ。セーター(毛糸)によって結ばれていた縁ではなかろうか。

佐藤健、菅田将暉……
我らの夢はまだまだ膨らむ

 最後に「もし仮に、2019年現在に活躍する著名人でセーターブックを制作するなら誰がよいか?」という質問を。

 すると、俳優の佐藤健の名前が。似合う! なんでも着こなせそう! 確かにセーター感がある! そして確実に売れそうな匂いも……。

 ちなみに「“もしも2019年にSBを作るなら誰に着せたい”問題」については次回以降にがっつり触れる予定である。脳内にて想像に想像を重ねてお待ちいただきたい。

 また、その話の延長で、80年代後半から90年代前半にビートたけしが愛用していた、ドン小西(当時は小西良幸)が手がけていたブランド「ficce(フィッチェ)」の話題にも至る。

 アバンギャルドで個性的なFicceのニット(※通称「たけしニット」)、最近では俳優の菅田将暉がたけしニットっぽいものを着こなし、一部では話題になった(インスタグラムには「#たけしニット」のハッシュタグも出現)。


『たけし Ficceのニットを着る』(雄鶏社)。近い将来、菅田将暉×たけしニット×SBが実現したらいいのにな(願望)。

左下に見えるのが、『たけし Ficceのニットを着る』。ド派手なセーターを実際に編むのは至難の業。

 しっかりSBについて学んだ我らは、最後に社内見学までさせて頂き(本当に素敵な社屋でした!)、充実の会社訪問を終えたのであった。

 日本ヴォーグ社の皆さま、本当にありがとうございました。

 第3回は急遽、SB座談会を開催。「これぞ! 我らのSBの楽しみ方」をお届け予定。お楽しみに。

●SB話、一緒に盛り上がりましょう!

Twitter、Instagramなどで、ハッシュタグ 「#セーターブック会議」をつけて、SBについて自由につぶやいてください。
SNS上でまとめたり、次回以降の記事で参考にさせていただきます。


今なら誰のSBが欲しい?アンケート

2019年の今、SBを作るなら誰に、どんなセーターを着せたい?
SNSをやってない方、SNSに書き込みづらい(けど熱い思いがある!)方は、ぜひ下記URLのアンケートフォームにて教えてください!
締切は2019年3月4日(月)18:00です。

https://goo.gl/forms/WEKYvomeKIcMrUjT2


ハルナ(執筆と分類担当)

mixi「平成のセーターブック」コミュニティ管理人。SB連載では執筆とデータベース作成を担当。ちなみに今、最もセーターを着せたいのは休日課長(ゲスの極み乙女。)。課長のセーター姿は日本一。本業は寺社仏閣広告の編集やテレビ番組関連記事のライター業務など。



コイシー(交渉担当)

面白そうなことには乗っかる気質から、ハルナが作った、mixi「平成のセーターブック」コミュニティの副管理人に。SB連載では外部との折衝など事務方を担当。本業は食のライター。セーターを着せたいのは、実は手脚が長くてプロポーション抜群の荒川良々。



オモムロニ。(収集担当)

のめり込むと身銭を切らずにはいられないタイプで、本特集に掲載のSB殆どを所有。本業は雑貨コーディネーター。雑誌CREAでギフトコラムを連載中のほか、2019年1月に『DAILY GIFT BOOK 気持ちが伝わる贈りものアイデア』を刊行。プロ野球選手にチームカラーのセーターを着せたい。

構成=水野春奈
撮影=深野未来、平松市聖



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