2019/02/24 21:00

ベトナムが誇る天空の楽園サパで 極彩色の山の民の暮らしに触れる

 山間の小さな町に、色鮮やかな伝統衣装をまとい、ゆるやかな暮らしを営んでいる人々がいる。日本の昔話とどこか通じる、ピースフルな光景に出会いに、ハノイから夜行列車に乗った。


険しい地形に守られた隠れ里


バックハー市場で見かけた、花モン族の女の子たち。

 ベトナムの山岳地方、サパに興味をもったきっかけは、サンデーマーケットの一枚の写真。野菜や日用雑貨を売る屋台が並び、人々、バイク、水牛でごった返す市場の賑わいが切り取られていた。

 目を引いたのは、そこにいる少数民族の女性たち。誰もが手仕事の美しいカラフルな衣服や帽子、アクセサリーで着飾っている。伝統衣装が、特別な日のためのものではない暮らし。見てみたい!


ファンシーパン山を登るロープウェイから見下ろした棚田。

 ハノイの北西約350キロ、中国との国境に近いラオカイ省にあるサパ。この国の最高峰ファンシーパン山を含むホアン・リエン・ソン山脈の、標高約1,600メートルに築かれた小さな町だ。


山間に忽然と現れるサパの町。山岳リゾートの洗練された風情も。

 険しい地形が幸いして、ベトナム主流のキン族に脅かされることなく、モン族やザオ族、タイ族など、おもに5つの山岳少数民族が、慣習を守りながら暮らしている。

 1880年代にはフランス人が避暑地としてこの地を見出し、どこかヨーロッパの山リゾートを思わせる佇まいもある。

まずは丘の上から町を一望


ハイキングしながら、景観の変化を楽しめるハムロンの丘。

 サパの中心地から行きやすいハイキング・スポット「ハムロンの丘」。整備されたコースには巨石の間を抜ける小道や桃の林、なぜか十二支の像やヤギ小屋などが配置され、どこかテーマパークのよう。


ハムロンの丘から見下ろす、パステルカラーのサパの町。

「天国の入口1」のコースを登っていくと、展望台に出る。

 海抜1,800メートルから見下ろすサパの町は、緑色をたたえたサパ湖や、山小屋風のカラフルな建物が密集し、まるでジオラマを見ているよう。

 ちなみに、“ハムロン”とは“龍の口”という意味があり、パワースポットでもある。

少数民族が暮らす
3つの村をハイキング


ラオチャイ村で出会ったおばあさん。年齢は、自称98歳。

 サパのハイライトは、やはり村への訪問。今回訪れたのは、ラオチャイ村、カットカット村、バンホー村の3カ所。


打ち寄せる波のような模様を描く棚田。

 起伏の激しい道をハイキングしながら、芸術的なまでに美しい棚田を眺め、それぞれの村に暮らす人々と出会う。

 村によっては入村料があるので、ガイドと一緒に訪問を。歩きやすい靴がオススメだ。


ハイキングの一群をすり抜けて、あぜ道をゆく赤ザオ族。

 ラオチャイ村へは丘の上から、棚田の合間の急峻な小道を降りていく。蛇行する川が山の間を流れる、牧歌的な風景が広がる。

 平地に出たものの、慣れないあぜ道に苦戦していると、赤いハンカチをほっかむりした赤ザオ族の一群にあっという間に追い抜かれる。


藍染の布を見せてくれた黒モン族のおばあさん。

 水牛と遊ぶ子供たち、手をつないで歩く兄妹などを眺めていると、“古き良き時代”という言葉が頭に浮かんだ。


土産物店が充実していたカットカット村。物売りも多かった。

 カットカット村はサパから比較的近い、黒モン族が暮らす村。


山間部ながら直射日光は意外と強く、川や滝で涼をとりたくなる。

工芸品を作っている様子を見学することもできる。

 小道の脇に土産物店が連なり、雑貨作りの実演コーナーや精米機といった農具の展示など、少数民族の暮らしについてわかりやすく紹介している。コース途上にある河畔や滝の水辺で、ひと休みするのも気持ちいい。


バンホー村で見かけた家族。子供たちも農作業のお手伝い。

 バンホー村は、観光とは縁遠い村。農家の庭先は、豚の飼料にするための乾燥トウモロコシが広げられ、一面黄色に染まっている。


バンホー村はトウモロコシ栽培がさかん。乾燥させたトウモロコシは豚の飼料に。

突然訪問したにもかかわらず、自分で染めた布を見せてくれるなど、歓待してくれた家族も。

 ガイドが家の中に声をかけ、中に入れてもらった。やや薄暗い土間で、おかあさんが藍染めの方法を手振りで見せてくれたり、赤ちゃんを背負ったおとうさんが自家製のトウモロコシ焼酎を飲ませてくれたり。

 ガイドのフレキシブルな対応で、飾りけのない素朴な暮らしを垣間見られた。

ロープウェイで
ベトナム最高峰に登る


2016年に開通したロープウェイ。パノラマビューが広がる。

 海抜3,143メートル、別名“インドシナの屋根”とも呼ばれるファンシーパン山。

 かつては2日間かけて踏破しなければならなかった高峰も、2016年に全長6,293メートルのロープウェイが完成。ロープウェイ+ケーブルカーで合計20分もあれば、頂上までアプローチできるようになった。


この日、頂上近くは濃霧がたちこめ、視界は真っ白。

 このロープウェイがすぐれもの。ぐるりとガラス面でできているので、棚田の上を飛んでいる感覚で景色を楽しみながら移動できる。

 ロープウェイの終着点から少し歩いてケーブルカーに乗り換え、山頂まであと一息。

 けれどケーブルカーで上昇するにつれ、霧が徐々に深まり、終点についた頃には周囲は真っ白。晴れた日なら眼下に広がるだろう絶景は、今回は残念ながらおあずけだ。

民族が集い色が氾濫する
サンデーマーケット


地元の人はもちろん、観光客も集まるバックハー市場。8時半~9時頃から始まり、14時頃まで賑わいは続く。

 ラオカイ省の中で最も規模が大きいのが、花モン族が集まる日曜日のバックハー市場。サパから車で約2時間半、道すがらガイドから市場にまつわる話を聞く。


マーケットでは買い物のみならず、家族での外食も楽しみ。

ガイドが目を輝かせて教えてくれた、市場の名物料理 “タンコオ”。

鮮やかに染めた、もち米を売るおばあさん。

 マーケットは山岳に暮らす人々にとって、週に一度の楽しみ。

 夜が明ける前から、馬に乗って、あるいは徒歩で家を出発して、うきうきと市場を目指す。一週間分の食料や日用品を買い込み、お祭り気分を味わうのだ。

 名物は“タンコオ”という鍋料理。馬肉のあらゆる部位をぐつぐつと煮込み、ビーフンをつけていただく。ガイドは子供時代、これが何よりも楽しみだったという。

 そして、マーケットは若者たちの出会いの場でもあるそうだ。


ポリタンクの中身はトウモロコシの焼酎。コクがあり、飲みやすい。

 バックハー市場は、パラソルを立てたスタンドやスレート屋根の小屋が並び、必需品から娯楽品まで売られていて、まさに玉石混交。


青空床屋も登場。すっきりさっぱり散髪してから、村へ帰るのだろう。

色鮮やかな花モン族の織物。値切り交渉は忘れずに。

 野菜やフルーツ、自家製のトウモロコシ焼酎、色鮮やかな刺繍の雑貨やアクセサリー、床屋さんまでも出没している。縁日を回る気分でひやかし歩くと、こちらまで楽しい気分。

 食べ物の屋台もあちこちに出ていて、カラフルな装束の人々が笑顔を浮かべて頬張っている。


200頭あまりが集まっていた水牛市場。小さいと農業用、大きいと食肉用として取引される。

 賑わいから少し離れた湖沿いには、竹籠にめいっぱい詰められたニワトリや、ふわふわの子犬、鳴き声を上げるブタ、そして200頭もの丸々と太った水牛など、家畜の市場があった。

 水牛は大きいものは6,000万ドン(約30万円)の高値がつく。けれど、売れなければ連れて帰らなくてはならず、それもまた大変だという。

 私は少数民族のおしゃれアイテム、精緻な細工のシルバーのチョーカーを購入。

 さっそく買ったばかりの戦利品を身に着けて市場を歩いていると、何人かの女性が「それ、いくらだった?」と聞いてきた。値段を伝えると、「ふーん」と、うなずいている。

 果たして、妥当な値段だったのか。ま、本人が納得ならば、それが正解なのだとしよう。

【取材協力】
ベトナム航空

http://www.vietnamairlines.com/jp/ja/


古関千恵子 (こせき ちえこ)

リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/4世紀あまり。世界各国のビーチを紹介する「世界のビーチガイド」で、日々ニュースを発信中。
「世界のビーチガイド」 http://www.world-beach-guide.com/

文・撮影=古関千恵子



【関連ニュース】

今日の運勢

おひつじ座

全体運

リラックスできる好調日。ボディメンテナンスに力をいれよう。...もっと見る >