2019/02/13 17:00

昭和歌謡の世界で「煙草の匂い」は どんな意味を持つ言葉だったのか

 刊行から半年以上が経つ今も、歌謡曲を愛するファンの間で話題となっている本がある。その名は、『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)。CREA WEBでは人気コラム「勝手に再ブーム」を連載している田中稲さんが、このジャンルの歌詞に頻出する単語を1,008語選び、絶妙な解説を加えた一冊だ。

 この中から、「た」「な」「か」「い」「ね」という5つの文字から始まる単語の解説を、特別に転載します!


第1回 「た」の部


【逮捕】

 好きな人に対する挑発。「私をこんなに夢中にさせた罪」で、自分のそばから離れられないよう、身柄を拘束しちゃうぞ! という強気の束縛宣言。しかし、相手のほうが何枚も上手で、サッサと逃亡されるケースがほとんどだ。

●用例
・ピンク・レディー「ウォンテッド」

【ダイヤル】

 電話機に付いている回転式の数字盤。昭和ではこの構造が主流だった。好きな人への電話も、数字1つ1つ、回転が戻ってくるのを待たねばならず、無駄に緊張したもの。電話を「掛ける」は、ある意味「賭ける」だったのだ。

●用例
・フィンガー5「恋のダイヤル6700」
・高田みづえ「原宿メモリー」

【たかが】

「その出来事は自分の中では重要ではなかったので」と、鼻であしらうようなポーズをとる時のフレーズ。フラれた直後の女性が思いきり強がってその恋をバカにする時にも。しかし、言葉に反し心の傷は相当深い。

●用例
・中森明菜「難破船」
・TOM★CAT「ふられ気分でRock'n' Roll」
・桂銀淑「すずめの涙」

【煙草の匂い】

 現在では嫌われる匂いだが、昭和では「大人の男性」を感じさせる憧れの香りだった。持ち物や体にこれが沁みついているのはヘビースモーカーの証。恋人のそれが自分の髪やシャツに移ると喜びさえ涌き出したのである。

●用例
・松田聖子「赤いスイートピー」
・谷村新司「22歳」

【ダンチョネ】

 船乗りの悲哀を歌った民謡。語源は「断腸の思い」「漁師の掛け声」など諸説ある。海辺の街の飲み屋で、漁師が獲ってきた魚を食べながら、これを聴く……。その時、酒だけでなく、切なさも体に沁み渡るもの。

●用例
・八代亜紀「舟唄」
・ダウン・タウン・ブギウギ・バンド「昭和元禄ダンチョネ節」


『昭和歌謡 出る単 1008語
 歌詞を愛して、情緒を感じて』

著・田中 稲
発行 誠文堂新光社
1,500円+税


田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

文=田中 稲
撮影=CREA WEB編集室



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