2019/02/17 11:00

「泣き虫」はよく泣く人にあらず? 昭和歌謡の詞に隠された機微を探る

 刊行から半年以上が経つ今も、歌謡曲を愛するファンの間で話題となっている本がある。その名は、『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)。CREA WEBでは人気コラム「勝手に再ブーム」を連載している田中稲さんが、このジャンルの歌詞に頻出する単語を1,008語選び、絶妙な解説を加えた一冊だ。

 この中から、「た」「な」「か」「い」「ね」という5つの文字から始まる単語の解説を、特別に転載します!


第2回 「な」の部


【渚】

「ここに来ないとカップルとして認定されない」くらいの、夏の恋の名舞台。砂場に相合傘やお互いのイニシャルを書いたり、波打ち際を追いかけっこしたり、水平線に沈む夕陽を見て告白したり、ラブラブし放題である。

●用例
・ザ・ワイルドワンズ「想い出の渚」
・松田聖子「渚のバルコニー」

【ナイトクラブ】

 現在の、若者が集うスタイリッシュなクラブとはまったくの別物。昭和歌謡では、人生経験に長けた色っぽい女性が接待してくれる、大人の安らぎの場を指す。ただし、あまり頻繁に通うと、ママとの浮気が疑われる。

●用例
・フランク永井・松尾和子「東京ナイト・クラブ」
・増位山太志郎「そんな夕子にほれました」
・石原裕次郎「二人の世界」

【泣き虫】

 たんなる「よく泣く人」ではない。「今涙を見せれば、男性がカワイイと思ってくれる」「ここで泣けば許してもらえる」というポイントを絶妙に突いて涙腺を緩めることができる上、顔を崩さず美しく泣ける、涙の達人。

●用例
・松田聖子「風は秋色」
・世良公則&ツイスト「あんたのバラード」
・桂銀淑「すずめの涙」

【なぐさめ】

 お節介なタイプが、落ち込んでいる人を哀れに思い、いろいろとやさしい言葉をかけること。時には自分の身の上話や不幸自慢に脱線する。される側にとっては余計に自分が惨めに思えて、これ以上迷惑な気遣いはない。

●用例
・中村雅俊「ふれあい」
・内山田洋とクール・ファイブ「噂の女」
・ペドロ&カプリシャス「別れの朝」

【浪花】

 働き者で自己犠牲精神に溢れ、「耐えてみせます」が口ぐせの女性と、芸達者なのに生活力が絶望的になく「酒持ってこんかい!」が口ぐせの傍若無人な男性が多い土地。したがって夫婦間は男尊女卑の極みとなる。

●用例
・都はるみ・岡千秋「浪花恋しぐれ」
・木村友衛他「浪花節だよ人生は」


『昭和歌謡 出る単 1008語
 歌詞を愛して、情緒を感じて』

著・田中 稲
発行 誠文堂新光社
1,500円+税


田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

文=田中 稲
撮影=CREA WEB編集室



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