2019/03/24 11:00

心からくつろげる姫路の古民家茶寮で 名物「カヌレ羊羹」と日本茶を楽しむ

 姫路市の南東部、播磨灘に面した的形町は、潮干狩りや海水浴で有名。

 また、「歴史の宝庫」といわれるほど、古代の古墳や僧・行基にまつわる寺院や中世の石像物、近世の禅寺の庭園など、古いモノが数多く残っています。


お店がある的形の町の様子。

 無人の山陽電車的形駅から、南に歩くこと、約15分。

 細い路地を歩いていると、蔵がある立派な建物や小さな神社を発見。

 水辺にはボートやヨットが係留されていたり、潮の香りがしたり。その新旧、和洋の対比が面白い。


ヨットクラブやハーバーがあり、水辺にはヨットやボートが。

 目指す「井上茶寮」は、瓦葺きの古い門に架かった暖簾が目印。中に入ると、飛び石のアプローチ。

 重厚な扉を開けると、小さな灯りと、丸窓越しの中庭からの光に浮かび上がる情緒たっぷりの空間。靴を脱いで上がります。


入口。

 建物は、塩田庄屋として17代続いた「旧植田邸本家」で、110年余り経っているのだそう。

 店主・井上祖人さんに迎えられ、右手のドアを開けると……。

 なんと、吹き抜けの高い天井の空間。大きな一枚板のテーブルと作家物の木製の椅子、2人用の丸テーブルを配した心地よい和洋折衷のしつらえ。

 大きな窓越しのデッキには、井戸の古いポンプなども残っています。


玄関。重厚な扉。

中庭を眺める丸窓。

 ほっと心が安らぎ、ずっと座っていたくなります。

 井上さんは、1993年、兵庫県三木市生まれで、10歳から北海道へ。札幌や東京、大阪のレストランで働き、お菓子も作ってきました。

 元々、甘いものが大好きで、東京のファーマーズマーケットでお茶菓子を販売していたことも。

 お茶に興味を持ち、5年前から茶道を習い始めたと言います。
 


店内。大テーブル8席。和洋折衷の居心地良い空間。

 この建物に偶然出合って一目惚れし、茶寮として営業しようと決心。2017年3月、おもてなしの場「井上茶寮」をオープンしました。

「お茶の可能性や新しい表現方法を開拓したい。お菓子は季節感を第一に、和菓子職人ではないので、固定概念にとらわれずに作っています」と井上さん。

 自ら選び抜いた日本茶を置き、和菓子を手作りしています。

「ビオの農家のお茶を使うと決めています。それは、単純に気持ちがいいから。お茶は、おおらかに飲みたいですよね」とにっこり。

 福岡の「白折」や和紅茶「べにひかり」、京都の焙じ茶「やぶきた」など、常時6種類。珍しい徳島の「阿波晩茶」もあります。

 どのお茶も、一煎目は、井上さんがテーブルで急須に注ぎ、その豊かな香りを楽しませてくれます。二煎、三煎と飲めるのも魅力。

 井上さんは、お茶とお菓子だけでなく、3皿構成のランチも提供。ランチの後、お茶を追加で注文して、ここでの時間を堪能するリピーターも多いそう。

「ひとりで営んでいるので、イベントなどで出店している時は、カフェはお休みなんです」

 店主自らが客をもてなす。そんな茶道の心を感じさせるお店でもあります。

品のある佇まいも魅力
井上茶寮の名物「カヌレ羊羹」

「井上茶寮」でいただける和菓子をご紹介しましょう。

 まずは、井上茶寮の名が知られるきっかけとなった「カヌレ羊羹」。

 洋の素材を組み合わせ、小さなカヌレ型に流して固めた羊羹です。

 井上さんがていねいに手作りする、様々な種類が次々に登場。ふた口ほどで食べ切る可愛いサイズがいい。


「カヌレ羊羹」1個 200円。左から、白餡×粒餡、ショコラ、酒粕、黒胡麻、トンカ。

「2トーン 白餡、粒餡」は「透き通る白餡とねっとり粒餡の妙」と井上さんが語るとおり、するりと喉を通っていく白餡と粒餡の食感の違いが楽しめます。

「ショコラ」は、チョコレートとは異なるねっとりとした舌触りが面白い。

「酒粕」は、兵庫県加西市産山田錦を使い、「富久錦」が醸造した酒・SENの酒粕を使用。一つの田圃から採れる酒米で一つの日本酒をつくる「一圃一酒」。

 日本酒の可能性を広げ、農業の在り方を伝えていく酒を選んでいるのが、井上さんらしい。ふわりと香る日本酒の芳香に魅せられます。

「黒胡麻」は、濃厚なゴマの風味。

「トンカ」は、バニラや杏仁、桜餅にも似たほのかな香りにほっこり。

 独特の風味とほろ苦さの「抹茶」の他、さくら、安納芋、栗マロンかぼちゃ、栗、檸檬といった季節感溢れるものや、きな粉、濃茶、塩羊羹といった和テイスト、洋菓子のような塩キャラメルも登場。


テイクアウト用の「カヌレ羊羹」贈答用箱入り。1箱 5個1,200円。内容は日替り。左から、白餡×粒餡、ショコラ、酒粕、抹茶、トンカ。

 バレンタインには、ベトナム、コロンビア、マダガスカル、ペルーなど、カカオの産地違いの5種類の箱入りショコラ羊羹も。井上さんの自由な発想にびっくりします。


「季節の最中」2個 500円。取材時は、桜の葉の塩漬けを入れた桜最中。

 茶寮では、作りたての「季節の最中」も味わえます。

 桜や山椒など、季節に合わせた餡を、桜や菊など、季節に合わせた皮にはさんだもの。パリッとした皮の歯触り、餡の上品な甘さを堪能。

 私がいただいたランチもご紹介しておきます。


ランチは3皿 2,000円。取材時の1皿目は「菊芋とケールのスープ」。

 ランチは3皿構成。1皿目は「菊芋とケールの温かいスープ」。

 ソテーしたケールの香ばしさが、菊芋の風味を引き立てます。「野菜は地元のもの、朝採れたものを使います」と井上さん。


ランチの2皿目はメイン料理。「北海道産黒豚挽き肉のクレープ包み」。

 2皿目は「北海道産黒豚挽き肉のクレープ包み」。

 添えられたルッコラと菜の花の苦味が春を感じさせます。文旦のビネグレットが爽やか。


ランチの3皿目はデザート。「カヌレ羊羹」。別に好みのお茶を注文すると、テーブルで注がれて香り立つ。

 3皿目は「カヌレ羊羹」。

 この日は、塩味が粒餡の優しい甘さを引き立てる「塩粒餡」と、口の中に桜餅を思わせる香りが広がる「トンカ」。お茶を合わせて、ゆったり楽しみました。

 井上さんひとりでやっているので、ランチは3組のみの受け付け。心地よいひとときを求めて、予約して出かけましょう。

 今年は新たに建物の改装に着手。座敷など、より魅力的な空間が店舗として公開される予定だとか。

 また、すでにネット販売している黒文字に加え、菓子皿やお盆など、職人に依頼して作ってもらっているオリジナルのお茶道具も販売を開始するそう。


お茶の回りの道具をオリジナルで展開。黒文字はすでに販売されています。

「お菓子もお茶も器ももちろん、パッケージや包装用の風呂敷、熨斗まで、和菓子を使うシーンをトータルで展開します」と井上さん。

 カヌレ羊羹はお取り寄せもOK。日本茶はもちろん、紅茶やコーヒー、日本酒やワイン、洋酒とのペアリングも楽しめる、素敵なお菓子です。

井上茶寮

所在地 兵庫県姫路市的形町的形1997 
電話番号 079-254-0075
Instagram https://www.instagram.com/_inoue_saryo_/
https://www.inouesaryo.jp/


宗田洋子(そおだ よおこ)

ライター。神戸生まれの神戸育ち。神戸を離れたことがない神戸っ子。ライター歴30年以上で、関西の雑誌の取材だけでなく全国誌でも関西取材を手がけ、老舗から新店まで回ったお店は数知れず。移り変わる街を見続けてきた。食いしん坊で飲んべえ。

文・撮影=そおだよおこ



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