2019/03/26 11:00

「星のや竹富島」で時間を忘れ エビを中心とした美食に舌鼓を打つ

vol.34 竹富島(1)


「雨の音が聞こえるんです」。

 支配人が言った。

 なんのことかと思ったが、ふと気づいた。東京で聞くのは、雨の音ではなかったのかもしれないと。

 人工物に雨がぶつかって、痛がっている音なのかもしれない。

「雨が近づいてくるのがわかるんです」とも言われた。

 遠くから雨が地面を打ち、葉を揺らし、次第に自分に近づいてくるのが、部屋にいてもわかるのだという。


 それだけ竹富島は、「星のや竹富島」は、音がない。

 風がない日は、庭にいても、車の音はもちろん、人声も、葉や鳥の声も聞こえない。

 見上げれば、ただただ丸い空が、雲を浮かべて、ゆったりと広がっている。

 見上げれば、数限りない星が、空いっぱいに広がり、手招きをしている。

 音がないので、そこには空と自分しかいない。

 宇宙の中にいる、人間としての小ささを感じるというのではない。

「なんくるないさ」という寛容が、自分の中に広がっていく。


 朝は、陽の光で目を覚まし、お腹が空いたら、薬草茶を飲みながら、命草を集めたサラダを食べる。

 日中は、木陰で本を読んではうたた寝をするか、誰もいない砂浜で、日がな一日思索に耽る。

 夕方は島民たちと共に、砂浜で落ちる夕日を眺めよう。

 夜は満天の星を眺めながら、泡盛を飲み、そのまま眠りにつこう。

 そんな日々を暮らしたい。

 そこには、“飽きる”という世俗的な考えもないはずだ。

 できれば一カ月、ここにいたい。

 切に、そう思った。

 しかしそれは、のんびりしたい。都会から離れたい。自分を無にしたい、という理由ではない。

 もし一カ月ここにいたら、自分の中で何が芽生え、変化するものか、確かめてみたい。

 そう思った。

 それは人間という業を背負った者の、特権なのだから。

エビを中心とした美食を堪能

「星のや竹富島」は料理も素晴らしい。

 夜はテロワールを生かした、島で養殖されているエビを中心とした料理をいただいた。


「命草と島豆腐のスープ」。

 様々な命草(ぬちぐさと読み、島に自生している様々な薬草のこと)の香りが口の中で弾け、その中を豆腐の優しい甘みと生に近いエビの甘みが泳いでいく。



「ドゥル天 トリュフの香り」。

 ドゥル天とは、“どぅるわかしー天ぷら”の略称。

 田芋を蒸して、豚肉や椎茸などを加えて練り上げたどぅるわかしーを丸めて、揚げたもの。

 庶民に色気を教えるが如く、素朴な芋の味わいに色香がまとう。新鮮な感覚。


「アーサーをまとった車海老のフリット」。

 アーサー(沖縄の岩場に生える緑色の海藻)の青々しい香りをエビが纏う。


「車海老のビスクと人参のクリーム」。

 人参の甘みとエビの甘み、甲殻類の香りが溶け合い、時間を緩める。



「車海老のサンゴ焼き 命草ソース」。

 命草ソースのほうじ茶のような香ばしい香りがエビの甘さを引き締める。

「マンゴーのババ」って
どんなデザート?


「竹富芋のローストとフォアグラのサラダ仕立て」。

 芋がねっとりと甘く、蜂蜜とオレンジの甘酸っぱいソースを合わせると、エレガントさを漂わす。


「車海老と豚のショーソン」。

 よく焼き込まれたパイの香ばしさに、思わず顔がにやける。


「竹富芋のタルト」。

 ほっこりとして美味しい。心が温まる。



「マンゴーのババ」。

 焼きたてフィナンシェが置かれ、そこに酒が注がれ、マンゴーが。楽しい。


 そして、食後は島唄が演奏された。

 あとはそれぞれのコテージに帰り、満天の星空を見ながら、泡盛でも飲もうか。

星のや竹富島

所在地 沖縄県八重山郡竹富町竹富
電話番号 0570-073-066(星のや総合予約)
https://hoshinoya.com/


マッキー牧元
(まっきー まきもと)

1955年東京出身。立教大学卒。(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く。「味の手帖」 「銀座百点」「料理王国」「東京カレンダー」「食楽」他で連載のほか、料理開発なども行う。著書に『東京 食のお作法』(文藝春秋)、『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)、『ポテサラ酒場』(監修/辰巳出版)ほか。

文・撮影=マッキー牧元



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