2019/04/29 21:00

マッキー牧元が太鼓判を押す 「星のや竹富島」の朝食の魅力とは?

vol.35 竹富島(2)


 朝は穢れがない。

 竹富島の朝は、微塵の滞りもなく澄み渡っている。

 早起きして自転車をこぎ、コンドイ浜に向かった。


 誰もいない。

 空と雲と太陽と砂浜と海と風だけが、ある。

 それがどれほど贅沢なことか。

 人間にとって大切なことか。

 僕は、ただただ空と海を眺めながら、ここに連れてきたい、愛する人たちのことを思い浮かべた。



 宿に戻り、朝食をいただく。

 今までなんども宿で朝食をいただいた。

 しかし、「畑人(はるさー)ブレックファスト」と名づけられた「星のや竹富島」の朝食は、ベスト3に入る。

「命草サラダ」に
細胞が浄化されるよう


 まず出迎えるのは、色あざやかなミックスジュースである。


「マンゴー、パイン、ヨーグルト」「ハイビスカス、エルダーフラワー、ジャスミン」「ゴーヤ、長命草、りんご」「スイカ、島唐辛子、ブラッドオレンジ、トマト、アセロラ」「パパイヤ、アーティーチョーク、パイン」「黒糖、バナナ、牛乳」「紅芋、ヨーグルト、ドラゴンフルーツ、ライチ」といったジュースたちである。

 さらに、オレンジやレモン、命草が漬け込まれた「さんぴん茶」、月桃、ゴーヤ、長命草、モリンガ、ホーリーバジル、シークヮサーなど10種類の草や野菜が漬け込まれた「リフレッシュウォーター」が用意されている。

 リフレッシュウォーターを飲み、ジュースを数種飲んで体を整える。

 一皿目は「命草サラダ」である。


 ハンダマや長命草、ゴーヤ、紅芋など、20種類の薬草と野菜のサラダには、ウコンや山羊チーズのシーザードレッシングなど5種類のドレッシングが添えられる。

 草を食み、根菜をかじる。

 無心になって、ひたすらむしゃむしゃと食べる。

 神経が活発になり、細胞が浄化されていく感覚に、心がゆっくりと座っていくのがわかる。



 もうこれだけで充足感に満たされるのだが、各種パンとオムレツ、ピリリとビバーツが効いたソーセージを食べ、体に力がみなぎって来た。

島でただ一人の農業者の気概


 朝食後は、竹富島の街を散策する。

 もう出かけているのだろう。

 家々はひっそりとして、観光客もいない。


 戻ると、宿の自家菜園の指導をしているという、89歳になる前本隆一さんが農作業中だった。


 話しかけると、

「あんたいくつダァ」

「63です」

「まだまだ小僧っ子だな。ガハハハ」

 と豪快に笑った。

 彼は、竹富島でだだ一人の農業者である。

 かつて大勢いた農業者は、もっと広い石垣や西表に渡った。

 残った農業者は生活が苦しく、転業し、次第に減って前本さん一人になってしまったのである。

 このままではいけない。粟や芋類、ニンニクなど、竹富島固有の種を残そうと彼は頑張ってきた。


「星のや竹富島」では、その文化を継承すべく、敷地内に畑を作り、前本じいが守り続けてきた種を植え、栽培を教わりながら、育てている。

 前本さんは、薬草類の「命草ぬちぐさ」の権威でもある。

 前立腺にはこれ、高血圧にはこれ、糖尿病にはこれと草の名前が、スラスラと上がる。

 かつて島には、医者がいなかった。

 それゆえに命草の効用が研究され、口伝にて代々伝わっているのだという。

 前本さんの元気な姿を見ていると、現代医学は人間の知恵の集積ではあるが、自然とはかけ離れていることを知る。

 自然と共生する、自然に生かされるということの意味を、前本さんに思い知らされた。


星のや竹富島

所在地 沖縄県八重山郡竹富町竹富
電話番号 0570-073-066(星のや総合予約)
https://hoshinoya.com/


マッキー牧元
(まっきー まきもと)

1955年東京出身。立教大学卒。(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く。「味の手帖」 「銀座百点」「料理王国」「東京カレンダー」「食楽」他で連載のほか、料理開発なども行う。著書に『東京 食のお作法』(文藝春秋)、『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)、『ポテサラ酒場』(監修/辰巳出版)ほか。

文・撮影=マッキー牧元



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