2019/04/16 17:00

精霊が宿るインドネシアの秘境 スンバ島のリゾートで無二の体験を

 世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、交替で登板します。

 第206回は、芹澤和美さんがインドネシアの素敵すぎる島を訪ねました。


大昔の暮らしが息づく
精霊の島スンバ


秘境の島のカルチャーと、ラグジュアリー感を同時に体験できるリゾートへ。

 1万数千もの島々が東西につながるインドネシア。数えきれないほどのリゾートがあるにもかかわらず、私はなかなか旅をする機会がなかった。

「きっとどこに行ってもツーリストでいっぱいでしょ」と誤解していたし、「近いアジアの島はいつでも行ける」という気持ちもあったからだ。

 そんな私が話を聞くなり飛びついたのが、スンバ島。バリ島の約400キロ南東にある、手つかずの自然が残る島だ。


青空を映す棚田は、バリ島にも似た風景。でも、この島には独特の精霊信仰や文化がある。

 スンバ島は、オランダに支配される20世紀初めまで、島外との接触がほとんどなかった秘境の地。

 今でも、「マラプ」と呼ばれる精霊信仰や伝統文化が連綿と息づき、交通手段には馬が使われている。


「ニヒ・スンバ」のヴィラの数は27。といっても、1つのヴィラに複数のベッドルーム棟を擁するタイプもあり、デザインはさまざま。

 近年はサーフスポットとして知られつつも、一般のツーリストにはまだまだ無名なこの島にあるのが、「ニヒ・スンバ」。

「トリーバーチ」のファミリーだったクリス・バーチがつくったリゾートだ。


宿泊費には3食とアルコールを除くドリンク、マウンテンバイクやスノーケリングなどのアクティビティが含まれ、バトラーサービス付き。

 このリゾートの魅力は、ただ秘境のラグジュアリーリゾートという点だけではない。

 島の生活向上に情熱を傾け、井戸を掘ったり、クリニックを開院したりするなどの活動に加え、スタッフの9割以上が地元島民を採用していることが、大きな特徴だ。

 そんな島と共生するリゾートなら、ぜひ体験してみたい!

 すぐにスケジュールを確保し、飛行機のチケットを手配した。


「ニヒ・スンバ」までは、ナム・エアでバリ島から1時間。初めての航空会社だったけれど、意外と快適。

 バリ島のデンパサールで国内線に乗り換え、スンバ島のタンボラカ空港まで約1時間。

 エアチケットも購入し、ヴィラも予約し、ひと安心……ということろで、プチ事件勃発。

 予約したガルーダ・インドネシア航空のバリ島発スンバ島行きのフライトが、この日にかぎってキャンセルになると、「ニヒ・スンバ」から連絡がきたのだ。


米国の旅行雑誌「トラベル&レジャー」では、2016年から2年連続で「世界一のホテル」に選ばれている。

 旅の予定は1日もずらせないから、同日にあるほかの航空会社の国内線を予約しなおすしかない。

 慌てたけれど、ガルーダ・インドネシア航空よりいち早く「ニヒ・スンバ」から欠航の情報をもらえたおかげで、即、代わりの便をおさえることができた。

島民たちに大歓迎されながら
隠れ家リゾートへ


国内線への乗り継ぎは、出迎えてくれた「ニヒ・スンバ」のスタッフにお任せ。

「ニヒ・スンバ」への旅は、バリ島のデンパサール空港に到着したときから始まっている。

 空港カウンターではチェックイン手続きをサポートしてくれるうえに、搭乗時間になれば機内までエスコートしてくれるのだ。

 国内線でこんなサービスを受けるなんて、これまでにない贅沢な気分!


風を感じるセミオープンの車で「ニヒ・スンバ」へ。車内にはココナッツジュースとホームメイドのケーキが用意されていた。

 スンバ島のタンボラカ空港から「ニヒ・スンバ」までは、送迎車で約2時間。この間、車窓から見る風景はとても新鮮だった。

 住居はどれも、「精霊が宿る」といわれる伝統的なとんがり屋根がついていて、家々の合間には、まるで遺跡のように巨大な先祖代々の墓が堂々とある。

 2階建て以上のビルはほぼないに等しく、まるでアドベンチャー映画のセットのよう。


「ダダ―!」。島の言葉で「やっほー!」といいながら、子どもたちが手を振ってくれる。

 一番驚いたのは、道行く人が、車の中の私たちに向かって手を振ってくれたこと。

 何百年も前の暮らしをかたくなに守っている島と聞いて、怖いイメージもあったけれど、まるで真逆。

 家畜の世話をする人や、馬の手綱をひく人、道端で井戸端会議をしている人……、作り笑顔なんかじゃない、本物のスマイルを向けてくれた。


約2.5キロにもおよぶプライベートビーチに面した緑のなかに、ヴィラやレストラン、ボートハウスが点在する。

 山を越え、素朴すぎる村をいくつも通り過ぎた西海岸にある「ニヒ・スンバ」は、まさに、大自然のなかの隠れ家。

 海岸線沿いの山の斜面に、ヴィラやレストラン、ボートハウス、ヨガパビリオン、厩舎などが点々と立っている。


宿泊したのは1ベッドルーム、見晴台付きのMARANGGA。プールや海を臨むテラス、庭、広いバスルームなどがある邸宅仕様。

 広い敷地にヴィラはわずか27。デザインはすべて異なり、すべてにプールサイドラウンジ付きのプライベートプールがある。

 ヴィラに一日籠っていても飽きないどころか、これならむしろ、籠りたい!


私の部屋についてくれたバトラーのTinus。郷土愛溢れる、知的でフレンドリーなスンバ人。

 滞在をサポートしてくれるのは、ゲストルーム専属のバトラー。

 24時間、彼らとはメッセンジャーアプリの「WhatsApp」を使って容易にコンタクトがとれる。

 リゾート内のどこにいても連絡ができるし、電話よりはるかに気が楽。

 バトラーの多くはスンバ島出身で、島の話もしてくれる。バトラーというより、地元の親友と触れ合っていたような感じだった。


夕方には日没、夜には満天の星。プライベートルームから眺める風景はいつ見ても飽きない。

 私が「ニヒ・スンバ」に到着したのは午後4時。ほっと一息をついたら、目の前の海に美しいサンセットが広がり始めていた。

 プールサイドのラウンジと、広い庭の先にひっそりとあるもうひとつのラウンジは、サンセット鑑賞の特等席だ。


ベッドルームのあるヴィラから庭を抜けると、海を見渡すスペースがある。もちろん、ここもプライベートスペース。

 涼しい海風に吹かれながら、ビンタンビールで喉を潤す間、聞こえるのは野鳥のさえずりと波の音だけ。

 夜は満天の星の下、プライベートプールで泳ぐのが最高の時間だった。


ディナーを終えてヴィラに戻ると、感動のベッドメイキングが。

2時間歩いてたどり着く
究極のスパとは?


リゾートとは離れた渓谷の中にあるスパエリア。

 2日目はスパでトリートメントを体験。

 リゾートにスパはつきものだが、「ニヒ・スンバ」のスパは、ほかに類をみないオリジナル感がある。

 リゾートから約2時間歩いて渓谷のスパエリアまで行き、そこで朝食をとり、プールで過ごし、トリートメントを受けて半日または1日を過ごすアクティビティは、その名も「スパ・サファリ」。


往路は山道や村をトレッキング。帰路は車で。

 かなり斬新なアクティビティだが、これも、ただ豪華というだけではなく、特別な体験や刺激を味わわせてくれる「ニヒ・スンバ」ならでは。

 体力に自信がない人は、往復路ともに車で送迎があるが、私は迷わず徒歩コースを選択。


スパエリアまでの道のりは、スタッフがつきっきりでサポートしてくれるから安心。

 スタッフに導かれ、「スパ・サファリ」に参加するほかのゲストとともに、スパエリアへ向けて出発。

 眼下に海が広がり、森はきれい……と、最初は散歩気分だったけれど、しだいに道はハードなものに。

 サンダル履きだからぬかるみでは足元がつるつる滑るし、山を歩くから上り坂もたくさんあるし、ジャングルのなかの小道は虫だって飛んでいる。


貯水池では、女性たちが洗濯中。

 でも、その合間に見たのは、美しく素朴な島の暮らしだ。

 立ち寄った集落では、子どもたちとあいさつを交わし、水汲み場でバケツを頭に乗せた女性とすれ違う。


歩き始めてほどなくすると、前から水牛の群れが。

 野生の豚の親子、泥浴び帰りの水牛の群れ、農作業をする村の人々……、次々に現れるのは、ふだんの暮らしではもちろん、ありきたりのリゾートでは触れ合うことのない、ローカルの空気そのもの。

 これは、お金で買えるものではない。


トリートメントメニューは数種類あるなかから3つを選ぶことができる。オイルも好きな香りをチョイス。

 山を越え棚田を歩き、ようやく到着したスパエリアは桃源郷そのもの。

 断崖の上に広がるスパの両側には、海と棚田が広がっていて、この景色だけでも癒されてしまう。

 とはいえ、たくさん歩いてお腹もペコペコ。まずは、真っ白なビーチを見下ろす絶壁にあるダイニングで朝食を。


波と風を感じながら、ゆっくりと朝食。ずっとここにいたいぐらい。

 用意されていたのは、フルーツやホームメイドのヨーグルト、パン、熱々の卵料理。

 午前中の優しい太陽を浴びてキラキラと輝く海を眺めながらの朝ごはんは、あまりに気持ちがよくて、思わず食が進んでしまう。


少々食べ過ぎてしまった後は、インフィニティプールで泳いで消化。

 トリートメントは、海や棚田を見渡すプライベートガゼボで。

 マッサージは絶妙なタッチで心地よく、寄せては引く波と葉擦れの音はまるで子守歌のように響き、気がつけば、すっかり熟睡してしまっていた。

 終わって目を覚まし、最初に目に飛び込んできたのは青空とヤシの木。

 こんな開放的なトリートメントは初めてかもしれない。


セラピストの絶妙なマッサージと環境が、心身を癒してくれる。

「ニヒ・スンバ」の精神を知る
地元の村探訪ツアーとは?


村を訪れるツアー。学校では、日本の文房具をプレゼントすると、とても喜んでくれた。

「スパ・サファリ」のほか、「ニヒ・スンバ」には、たくさんのユニークなアクティビティがある。

 そのひとつが、このリゾートが立ち上げたスンバ財団がサポートする小学校や、マラリア予防と治療のためのクリニックを訪問するツアーだ。

 滞在3日目は、このツアーに参加することにした。


マラリアを予防・治療するクリニックの尽力で、罹患率は大幅に減ったという。

 ちなみに、リゾートの収益は、財団を通して地元に還元されている。

 用途は、安全な生活用水を供給する井戸の建設や貯水タンクの設置、小学校の給食、マラリア予防対策など。


栄養改善を考えて作られた給食を食べる子どもたち。ランチが賑やかなのは各国共通!

 これらは大きく島民の暮らしを改善し、マラリアの罹患率は85%も減少したのだそう。

「ニヒ・スンバ」で私たちが使ったお金が、そうしたことに役立てられるなんて、とてもうれしいこと。


上級生の女の子は、ちょっとおすまし。

 とはいっても、学校を訪れるまでは、「リゾートに滞在中の見知らぬ外国人が訪ねて、上から目線だと思われないかな」と、少し不安があったのも事実。

 そんな私を迎えてくれたのは、元気いっぱい、無邪気な子どもたち。


「ニヒ・スンバ」のスタッフと子どもたちは大の仲良し。

 どの子も大歓迎ムードで、「トーキョー?」「ジャパン?」と、次々と話しかけてくる。屈託がなく、外国人に興味津々なのも、無邪気でかわいらしい。

 思い起こせば、タンボラカ空港から「ニヒ・スンバ」に向かう途中、島の人々が笑顔で手を振ってくれたのは、たんに島の人がフレンドリーというだけではなく、このリゾートが島と共生しているからこそなのだと実感した。


ヴィラの入り口に用意されているのは、砂にゲスト名が記されたウエルカムボード。

 思いがけない体験をした「ニヒ・スンバ」での3日間。

 心地のいいベッドも、夜空を仰ぐプライベートプールも、海風を感じながら食べる食事も、このうえなく贅沢だったけれど、同時に、かけがえのない体験が心を満たしてくれた。

 島の人が幸せであればあるほど、このリゾートに滞在する意味がある。

 またいつか、このリゾートに行きたい。島の人々に会うために。

Nihi Sumba
(ニヒ・スンバ)

所在地 Desa Hobawawi,Kecamatan Wanukaka,Sumba,87272 Indonesia
電話番号 0811-3978-550
https://nihi.com/


芹澤和美 (せりざわ かずみ)

アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオ ノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.journalhouse.co.jp/

文・撮影=芹澤和美



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