2019/05/03 17:00

噂の俳優・若葉竜也が明かす演技論 話題の映画『愛がなんだ』の場合は?

 恋愛映画の旗手、今泉力哉監督の最新作『愛がなんだ』に出演した若葉竜也。四半世紀を超える役者としてのキャリアを誇る彼が、独特なセリフ覚えや芝居に対するアプローチなどを語ってくれた。

プレッシャーとの戦い
メジャー大作への出演


――無差別殺人犯の少年を演じた『葛城事件』の出演により、第8回TAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞されるなど、注目を浴びたことについては、どう捉えましたか?

 自分を認めてくれる人が増えたことは嬉しかったんですが、同時に怖さも感じました。これからは、監督からの演出があまり付かない現場が増える予想がついたからです。期待されるだけ、こちらからそれ以上のものを提示しなければならない、というプレッシャーはありますね。

――18年には『曇天に笑う』のほか、『サラバ静寂』『素敵なダイナマイトスキャンダル』『パンク侍、斬られて候』といった4作が公開されました。

『曇天に笑う』のようなメジャー大作には出なそうと思われるんですよね(笑)。思うところはいろいろありますが、受けた仕事は全うしたいという気持ちがあります。「僕はやります」という想いがしっかり提示できて良かったと思っています。

芝居のブレを考慮した
セリフの覚え方


『愛がなんだ』より。(C)2019アイコン映画「愛がなんだ」製作委員会

――角田光代の原作を映画化した最新出演作『愛がなんだ』では、ヒロインの友人である葉子に一途な想いを寄せ続けるカメラマン志望・ナカハラを演じています。

 主要キャラ4人の中では、観客がいちばん共感しやすいキャラなので、いちばん生々しくないといけないと思いました。この映画に限らず、僕は台本をもらって、2日ほどかけてセリフを全部頭に入れます。その後はクランクイン前日ぐらいまでは台本は開きません。相手役のセリフを聞くことで、自分のセリフが出てくる程度がいいと思っているんですよ。

――ナカハラに関しては、そこから+αの作業をされたんですか?

 今回のナカハラはキャラ的に、その作業をもっとやらないといけないと思ったので、撮影の直前まで、台本を開きませんでした。一歩間違えれば、手を抜いているように見えてしまうんですが、決してそのようなことはなく、今回もしっかりナカハラの言葉として出せたと思います。今泉(力哉)監督も、それを理解して撮ってくださったと思っています。

あえて熱演をしなかったことで
生まれた名シーン


――また、深川麻衣さん演じる葉子に対する恋愛観や、彼女との距離感を出すための役作りは?

 30年も生きていると、同じような経験もあります。じつは深川さんとの撮影は2日間ほどなんです。なので、葉子は昔からの知り合いということを自分に馴染ませるため、深川さんの情報を集めるところから始めたんです。深川さんの写真をめちゃくちゃ集めて見ましたね(笑)。だから、現場で会った時の深川さんは、葉子にしか見えませんでした。そして、観客がナカハラと葉子を観た時のことを考え、本能的に僕と深川さんが演じているだけにならないように、その距離感の塩梅を探すことは相当苦労しました。

――コンビニ前のシーンが印象的でした。エピソードを教えてください。

 あそこはストレートに熱演するという方法もあったと思うし、芝居的にもそうする方が簡単なんです。でも、普通ならボルテージが上がって熱くなるところを、ナカハラが持つ羞恥心により、笑ってゴマかすことで、あえて抑える芝居を選びました。彼が弱さで背伸びしている感じの方が真意が伝わると思うし。たとえば、知り合いのお葬式に行って、ボロボロ泣きながら「有難うございました」と言われるより、「わざわざ来てくれて有難ね」と必死に明るく振舞われる方が言葉に詰まる感じ。それを共感してもらいたいと思いますね。

芝居のプロに近づくことは
いちばんの素人になること


――そんな『愛がなんだ』の現場を通じて、若葉さんが学ばれたことは?

 どの現場でも学ぶことはあると思うんです。なにより、ラブストーリーに対するアンチテーゼを得意とする今泉さんの映画に出られたことが嬉しかったんです。ずっと、今泉さんが書いたセリフを、自分ならもっと体現できると思っていたので! この現場は、自分の自信にも繋がりました。

――6月に30歳を迎えるにあたり、俳優としての今後の展望を教えてください。

 ど凡人すぎて、俳優らしさなんて、まったくなくて。「ど凡人すぎる俳優がいてもいいでしょ?」とも思っているぐらいなんです。まだまだカメラの前で芝居をすることに対して、羞恥心みたいなものはあるし。顧みると、芝居のプロにいちばん近づくことって、いちばんの素人になることなんじゃないかと。そうすれば、生々しいものを体現できるんじゃないかと思っています。どうでもいいセリフに共鳴してもらえたら嬉しいですね。スゴいとか、カッコいいと思う人はいっぱいいても、その人にはなれないですから。だから、自分は自分なりのカラーで戦うしかないと思っています。


若葉竜也
(わかば・りゅうや)

1989年6月10日生まれ。東京都出身。幼少時代から俳優として活動。陰のある役から、アクの強い役まで幅広い演技力で、映画・ドラマ・舞台などで幅広く活躍する。2016年公開の『葛城事件』では、第8回 TAMA映画賞・最優秀新進男優賞を受賞。


『愛がなんだ』

主人公は28歳のOLテルコ(岸井ゆきの)。彼女は一目ぼれしたマモル(成田凌)に想いを寄せている。自分の時間のすべてをマモルに捧げ、その結果、仕事を失いかけても、年下のナカハラ(若葉竜也)を振り回す自由奔放な友人・葉子(深川麻衣)から冷ややかな目で見られても、彼一筋の毎日を送る。
2019年4月19日(金)より、テアトル新宿ほかにて全国公開
http://aigananda.com/
(C)2019アイコン映画「愛がなんだ」製作委員会

くれい響 (くれい ひびき)

1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

文=くれい響
写真=白澤 正
ヘアメイク=FUJIU JIMI
スタイリスト=Toshio Takeda(MILD)



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