2019/05/13 21:00

あのゴダールが日本語をしゃべった! 2018年のカンヌ映画祭を振り返る

マッツ・ミケルセンは
とにかくかわいかった!


ゴダールの『気狂いピエロ』のキスシーンが2018年のアイコン。今年は先日亡くなったアニエス・ヴァルダ。

 是枝監督がパルムドールを受賞したのがついこの間のような気がするが、もう2019年のカンヌ映画祭が5月14日(火)から始まってしまう!

 今年の開幕作品はジム・ジャームッシュが、ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、ティルダ・スウィントンらおなじみのメンバーで撮った『The Dead Don’t Die』(原題)。どうやらゾンビ・コメディらしい。

 常連タランティーノがディカプリオとブラピで撮った『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が今年の目玉と目されている。

 完成が遅れていて、上映されるかどうか危ぶまれていたが、追加でコンペ入りが発表になった。

 今年のレポの前に、追っかけ日記らしく、2018年のカンヌでゲットした映画人たちとマダムアヤコの写真をお届け。

 毎年毎年、自己満足な気もするが、カンヌに行くこと自体が自己満足以外の何ものでもないのでお許しを願いたい。


マッツは私の『バック・トゥ・ザ・フューチャー』Tシャツを褒めてくれた。さすが同世代。

 まずはみんな大好き、マッツ・ミケルセン。そしてみんな大好き、マッツ・ミケルセン!

 是枝監督もお好きだとか。ドラマ「ハンニバル」のレクター博士などハードな役柄も多いが、素顔はとってもかわいいマッツ。とってもかわいいマッツ。

 大事なことなので2度言った。まったく構えるところがなくて、気の良いお兄ちゃんという感じなのだ。

 カンヌで特別上映された新作『Arctic』(原題)は、飛行機事故で北極に一人取り残されてしまった男のサバイバル映画で、ほとんどセリフなし。

 観ているみんながマッツを応援したくなるよ。「ウィルソーン!」って。それは違う映画だが。

ゴダールは記者会見の手法にも
革命を起こした!

 続いて現在公開中の『イメージの本』で、“スペシャル・パルムドール”という、すべてを超越した賞をもらった“歩くヌーヴェル・ヴァーグ”こと、ジャン=リュック・ゴダール。

 マダムアヤコは誕生日が同じなので、心密かにフランスの映画の父と慕っている。ちなみに古田新太と壇蜜も同じ12月3日生まれ。

 しかし、ゴダールとの2ショットは実際に会ったのではなく、スマホ画面の中。でもコラージュじゃないよ。


ゴダール先生が話す画面の下の方にマダムアヤコがいるのがおわかりだろうか。この画像は自分のiPhone を画面に向けて動画で撮ったものの一部。

『イメージの本』は膨大な過去の映像のコラージュだけれども、マダムアヤコはゴダールとiPhone越しにFaceTimeでしゃべっているのだ。

『イメージの本』で4年ぶりにコンペに出品したゴダールだったが、足腰を痛めているということで、カンヌ入りが出来ず。

 コンペ出品者は公式記者会見をするのが決まりなのだが、そこでゴダールはスイスの自宅からFaceTime機能を使って質疑応答をするという、画期的な会見を行った。さすが、映画の革命児だ。

 彼の『気狂いピエロ』が2018年のカンヌのアイコンになっていたので、その前でゴダールが会見する姿を見たかった気もするが(同作のヒロインで、ゴダールの元妻アンナ・カリーナも久しぶりにカンヌで元気な姿を見せていた)、今まで誰もやらなかったことをやろうとするその気概は、今もヌーヴェル・ヴァーグ(新しい波)が続いていることを意味している。

 普段、カンヌの記者会見で手を挙げて司会者に指名してもらうのはなかなか難しいのだが、ここは早いもの勝ちで、プロデューサーのファブリスさんのiPhone前に並んだ順番ということになり、マダムアヤコは思い切って並んでみた。


FaceTimeで質問する様子をY新聞の記者さんが撮ってくれた。私はCSムービープラスで、毎年カンヌから日本へ授賞式を生中継レポしているが、実はあれも基本はこのスタイル。今年も5月25日(土)深夜にやります。

 10番目に順番がきて、まずは「フランス語が苦手なので、英語で質問させてください」と言ったところ、「日本人もロシア人も、フランス人も英語で話し、自分の国の言葉で話さない。ひどいことです」とフランス語で返されてしまった。ぎゃふん。

 でも英語とフランス語の通訳さんしかいないしな、と困っていたら、なんと日本語で「そうですか……」と言ったのである。ゴダールが。

 ドキドキしながらも私も「こんにちは」となんとか日本語で返してみた。最近、あまり役者に演技をさせなくなっているので、「俳優の演技というものをもう信頼していないのか?」という質問をしたところ、「今まで協力してくれた俳優たちの気分を害するから、それには答えられないが、今の俳優には何か問題があるとは感じる。統治するという意味ではなく、政治の中にいるようだ」という趣旨の返事をしてくれた。

 そして最後にまた「そうですか」とつぶやいた。なんだか小津安二郎の映画のようだった。これだけでもカンヌに行った甲斐があった。

樹木希林が2ショットを望んだ
フランス人俳優の名は?


是枝監督とムービープラスのマスコット、パルム君とウオ子ちゃん。ウオ子ちゃんは2018年で引退みたい。

 2019年は日本作品は現時点でコンペ参加はなしだが(開催直前に作品が増えることもあるが)、昨年はコンペに2本も入っていた。

 もちろん1本目はパルムドールに輝いた是枝監督の『万引き家族』。授賞式以前の取材だったが、すでにこの時点で『万引き家族』は間違いなく大きな賞をとると思っていたし、ご本人にもお世辞抜きでそう伝えたが、素晴らしい結果になってよかった。

 このときはまだ詳細は言えないと言っていたが、すでにカトリーヌ・ドヌーブとジュリエット・ビノシュによる新作『La Verite』(原題。「真実」の意味)の準備に入っていた是枝監督。

 こちらも今年のカンヌでの上映が噂されていたが、まだ編集中とのこと。早く観たい!

 そして『万引き家族』が日本でも大ヒットして本当によかった。今年の東スポ映画大賞でお会い出来なかったのが残念だが。

 監督は前回取り上げた『バーニング 劇場版』のイ・チャンドン監督を敬愛していて、カンヌでもこれだけは観たと言っていた。 


スティーヴンはアメリカ育ちなので、英語のほうが母国語。とても綺麗な言葉遣いで知的だった。

 その『バーニング 劇場版』で謎めいた男を演じたスティーヴン・ユァン。世界中で人気のドラマ「ウォーキング・デッド」のグレン役で一躍ブレイクしたが、まったく浮かれたところのない、穏やかで気さくな人柄。

 映画の中では一転、妖しげな魅力を発していたが、いい人グレンを長年演じて退屈していた部分もあったようだから、良いチョイスだった。カンヌで助演男優賞があったら彼にあげたかった!


東出くん、本当に紳士でマダムも照れました。

 日本映画のもう1本のコンペ作だった『寝ても覚めても』の濱口竜介監督と主演の東出昌大さんと。

 東出さんは、共演の唐田えりかちゃんがレッドカーペットの階段でつまずきそうになると、すかさず手を出して支え、まるでヒュー・ジャックマンかと思ったよ! 取材のときも、ほんと紳士で、気を使ってくれる。

 濱口監督とは取材のあと、町のジェラート屋さんでばったり!


濱口監督が食べてるワッフルは是枝監督もお好きだそう。

 最後に、昨年亡くなった樹木希林さんのお写真を。『万引き家族』は私の足立区の実家近くでも撮影されていたが、映画の中では本当に近所にいそうなおばあちゃんになっていた。


希林さんは「こんなにいい思いをさせてもらったのは是枝監督のおかげ」と言っていた。立っているのが辛い日もあったそうで、側で娘の内田也哉子さんが常に見守っていた。

 囲み取材では、娘さんがファンだというマチュー・アマルリックと写真を撮ってもらった話を楽しそうにしていらした。

 是枝監督や河瀬直美監督の作品で、毎年のようにカンヌ入りしていた希林さん。今年はもういないと思うと淋しい。

 でも映画祭というキャラバンは続く。


おまけ。映画祭が終わった翌日、のんびりランチをしていたら、なんと出川哲朗さんに遭遇! 「世界の果てまでイッテQ!」のパパラッチ企画で来ていたのだ。テレビのまんまでの哲ちゃんで、いやあ、テンション上がったー! 今年も来てほしいな。マダムアヤコもパパラッチ出川に負けず、今年も追っかけるよ。


石津文子 (いしづあやこ)

a.k.a. マダムアヤコ。映画評論家。足立区出身。洋画配給会社に勤務後、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。映画と旅と食を愛し、各地の映画祭を追いかける日々。執筆以外にトークショーや番組出演も。好きな監督は、クリント・イーストウッド、ジョニー・トー、ホン・サンス、ウェス・アンダーソンら。趣味は俳句。長嶋有さん主催の俳句同人「傍点」メンバー。俳号は栗人(クリント)。「もっと笑いを!」がモットー。片岡仁左衛門と新しい地図を好む。

文・撮影=石津文子



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