2019/05/26 17:00

もしも兼高かおると旅に出るなら 横山剣はどの国を訪れたい?

 東洋一のサウンドマシーン、クレイジーケンバンドを率いる横山剣さん。その常人を超えた旺盛なクリエイティヴィティにインスピレーションを与える源泉のひとつが、魅力的な女性たちの存在です。これまでの人生で恋し憧れてきた、古今東西の素敵な女性について熱く語ります!


#009 兼高かおる


この写真が撮影されたのは1953年というから、当時の兼高氏はまだ20代半ばの若さ。「兼高かおる世界の旅」の前身となるテレビ番組が始まるのはこの6年後となる。

兼高かおる(かねたか かおる)

1928年神戸市生まれ。本名は兼高ローズ。インド人の父と日本人の母を持つ。ロサンゼルス市立大学に留学した後、ジャパンタイムズなどの媒体でジャーナリストとして活躍。59年、自らがレポーター、ナレーター、プロデューサー、ディレクターを兼任する「兼高かおる世界飛び歩き」(TBS系)がスタート。翌年、「兼高かおる世界の旅」と改題され、90年まで続く長寿番組となる。71年には一般女性として世界初の南極点到達を果たす。86年から20年間にわたり、横浜人形の家館長を務める。90年、菊池寛賞受賞。91年、紫綬褒章受章。2019年に心不全で死去する。

インド系の女性に心惹かれて

 子どもの頃、日曜の朝の定番ともいうべき存在だったのが「兼高かおる世界の旅」。

 1960年から90年まで、実に30年以上の長きにわたってTBSで放送された長寿番組です。

 海外旅行がまだまだ高嶺の花だった昭和の時代の視聴者は、この紀行番組を通し、世界各地の風物について見聞を広げ、また憧れを募らせたものです。

 個人的には、僕の好きなパンナム航空がこの番組に協賛していたのもうれしかった。

 ジャーナリストの兼高かおるさんが自ら赴く場所は実にさまざま。

 例えば、モナコでは王侯貴族の世界を垣間見たかと思えば、辺境の地では現地の部族が原始的な生活を送る集落に足を踏み入れる。振れ幅が広いんです。 

 その映像のバックでは、毎回、兼高さんと芥川隆行さんによる掛け合いのナレーションが繰り広げられます。

 兼高さんのトークは結構言いたい放題なんだけど、そこに全然嫌味がない。芥川さんの合いの手もまた、低めのトーンの美声が絶妙な包容力を帯びていて、とても品がいい。

 あの番組では、兼高さんはレポーターとナレーターとプロデューサーとディレクターを兼任していたそうですね。まさにスーパーウーマン。

 何でも、兼高さんは、お父さんがインド人、お母さんが日本人というハーフなんだとか。

 僕は、昔からなぜかインドの血が入った女性に惹かれてしまうんですよ。真理アンヌさん、シリア・ポールさん……。今思えば、その元祖が兼高さんだったのかも。

グランドキャニオンで買った
お土産の秘密とは?


90年に行われた第38回菊池寛賞授賞式の控室での1枚。

 兼高さんの影響でしょうか、幼い僕の心の中にも、秘境に対する興味がムクムクと湧き上がってきました。

 日頃から、グランドキャニオンやモニュメントバレーの写真なんかを目にしては、こんなところに行ってみたいなあという思いに焦がれていたんです。

 僕はオカルト雑誌「ムー」の愛読者でもあったから、ペルーやメキシコなどにある、宇宙人伝説が残る土地にも夢中になったものですが(笑)。

 そんなことをぼんやり考えていた小学5年の夏休み、すでに母と離婚して別の暮らしを送っていた実の父と、アメリカを旅する機会に恵まれました。

 サンフランシスコ、ロサンゼルス、ラスベガス、ハワイを駆け足で巡る9日間の旅程です。

 ラスベガスを訪れた時、眠っている僕を置いて夜中にカジノへと繰り出した父が大当たりしてにわかに羽振りがよくなったらしく、翌朝、急に「どこ行きたい?」と聞いてくる。

「グランドキャニオン!」と即答したら、本当にすぐ連れて行ってくれました。セスナをチャーターして、日帰りで。

 崖の間を縫って飛ぶような、スリリングなフライトは忘れられません。雷も結構激しかったな。

 グランドキャニオンのレストランにお土産コーナーがあって、そこで貯金箱を買ったんですよ。崖の突端に鹿が立っているというデザインが、いかにもアメリカっぽいセンスだなあと思って。

 ところが、日本に帰って貯金箱の底を見たら、「Made in Japan」と書いてある(笑)。

 独自に調査を進めたところ、その工場が横浜の保土ヶ谷にあるということまで突き止めることができた。

 よりによって、旅先で買ったお土産が、自分の地元の横浜で作られていたんです(笑)。

 そこでは、アメリカに限らず、さまざまな国のお土産を生産し、輸出していたんですよ。

 このエピソード、現在の音楽でいうなら、僕も大好きなVIDEOTAPEMUSICというアーティストに通じる無国籍かつ多国籍な世界観を感じますね。

ドライブのBGMは
レス・バクスター

 兼高さんと旅ができるなら、海外でドライブを楽しみたいですね。車はタタ。兼高さんがインド系ということで、ここはインド車を選びたい。

 タタのスポーツカーを飛ばすなら、『ムトゥ 踊るマハラジャ』の主演俳優としておなじみのラジニカーントみたいに、でっかいサングラスをかけて思いきりカッコつけてみたいですね。

 インド車といえば、若い頃、僕は横浜の大黒埠頭で、輸入車を船から船へと積み替える仕事をやっていたことがあります。

 一台一台自分がハンドルを握って運転するんですが、インド仕様のジムニーのドアを開けたら、車内は本当にカレーの香辛料の匂いがした。新車なのに(笑)。

 タタに乗ってドライブしたいのは、モロッコのカサブランカ。と言いながら、カサブランカのこと全然知らないんですけど(笑)。

 カーステレオから流れる音楽は、レス・バクスター。マーティン・デニーと双璧をなす、エキゾティックサウンドの巨匠ですね。


「Boca Chica」が収録されたレス・バクスター&101ストリングス・オーケストラのアルバム『Que Mango!』(70)。

「7時77分」が収録されたクレイジーケンバンドのアルバム『777』(03)。

 なかでも、僕らクレイジーケンバンドが「7時77分」という曲の編曲の下敷きにさせてもらった「Boca Chica」を聴いてみたいもの。

 流麗なストリングスが印象なこの曲を聴くたび、「兼高かおる世界の旅」を思い出すんです。

 スタイリッシュでありながら、表現の仕方がポップで親しみやすい。アカデミックな知識を持ちながら、それを噛み砕いてお茶の間に届けてくれた兼高さんのキャラクターとも重なります。

 もちろん車内では、兼高さんと芥川さんのように上品な会話を繰り広げたいですね(笑)。


横山剣 (よこやま けん)

1960年生まれ。横浜出身。81年にクールスR.C.のヴォーカリストとしてデビュー。その後、ダックテイルズ、ZAZOUなど、さまざまなバンド遍歴を経て、97年にクレイジーケンバンドを発足させる。和田アキ子、TOKIO、グループ魂など、他のアーティストへの楽曲提供も多い。2019年8月にニューアルバムをリリース予定。
●クレイジーケンバンド公式サイト http://www.crazykenband.com/

構成=下井草 秀(文化デリック)



【関連ニュース】

今日の運勢

おひつじ座

全体運

家で好きなことに没頭しよう。ペットと遊べば時間を忘れそう。...もっと見る >