2019/06/14 17:00

サンダンス映画祭で日本人初の快挙 長久允監督は電通社員!?

 “ゾンビのように感情を失った少年少女の冒険”を描いた長編映画デビュー作『WE ARE LITTLE ZOMBIES(ウィーアーリトルゾンビーズ)』で、サンダンス映画祭審査員特別賞オリジナリティ賞を受賞した長久允監督。

 いま、世界が注目するファミコン世代の映像作家の頭の中は?

ゲームのサブキャラを意識した
独特なヘアスタイル


――幼い頃の夢を教えてください。

 小学生の頃から動物が好きで、爬虫類や両生類を飼っていて、動物博士になりたかったですね。あとは、ファミコンが好きだったので、ゲームクリエイターにもなりたかった。

「ロックマン」のボスキャラ募集にも応募しました。ゲームのサブキャラみたいな存在が好きなこともあって、6~7年前から、それっぽい髪型にしています(笑)。

――その後、青山学院大学のフランス文学科に進学された理由は?

 中学の頃から音楽好きになり、シャンソンにハマっていたので、自分で歌いたい想いもあって、フランス文学科を選びました。大学では、シュルレアリスムやエログロ文学の解析などをしていました。

 その一方で、サックスプレイヤーになることに挫折し、「映画を学びたい!」と、Wスクールでバンタンデザイン研究所に通い始めました。


――そこで短編を製作されていたそうですが、大学卒業後は、映画業界ではなく広告代理店に就職したんですね。

 スーツ着て、7:3分けで就活をしていましたが、映像の業界はすべて落ちてしまって、今の会社だけ受かったんです。その後、坊主頭で営業職をやっていましたが、試験を受けて、念願のCMプランナーになることができました。

有休を使って
映画を撮りました


――そして、13年にはカンヌ国際広告祭 ヤングライオンFILM部門メダリストを受賞するなど、広告業界で活躍されますが、自身にとっての転機は?

 短編『そうして私たちはプールに金魚を、』(以下『プー金』)を撮ったときです。あるとき体調を崩して仕事を休んでいたときに十数年ぶりに「やっぱり映画を撮ろう!」と思って、有休を使って撮りました。

 映画を撮りたくても広告の世界から抜け出せない僕の素直な気持ちを、映画の中に出てくる埼玉県・狭山を抜け出せない少女たちの姿に込めました。

――そんな『プー金』は、第33回サンダンス映画祭ショートフィルム部門でグランプリを受賞しました。

 ほかの映画祭にも応募したんですが、まったく反応がなかったですし、何のコネクションもなかったので、この結果にビックリしました。

 それで、賞を獲れたということよりも、「自分が正しい・面白いと思っているものを、また作っていいんだ!」という気持ちになり、次回作のイメージが膨らんでいきました。


――そして、長編デビュー作『WE ARE LITTLE ZOMBIES(ウィーアーリトルゾンビーズ)』を手掛けますが、設定やキャラは違っても、テーマ性や「まるでゾンビのように生きている4人」が主人公であることなど、『プー金』の続編的な意味合いもありますね?

『プー金』を上映したときに、「短編じゃないと成立しない」「この監督は短編しか撮れない」という意見もありました。だから、あえて短編と同じ話法やテンションで長編をやりたかったんです。

 人数に関しては、あえて意識してません。「ファイナルファンタジー」のゲームのパーティメンバーも4人ですし。

8ビット風の映像は
ファミコン世代ならでは


――今回、4人の少年少女の人生を体現するときの方法として、8ビットなど、懐かしい低ビットのTVゲーム風映像にした理由は?

 僕は自分の人生を切り出さないと作品を撮れないんです。少年時代はゲームばかりやっていたので、8ビット風な映像に関しては、ごくごく自然な流れだったと思います。

 僕自身が最近の情報量が多い高クオリティゲームに心が反応しないんですよ。この映画の少年少女たちのような現代の若いコも、情報量の少ない低ゲームに反応して、面白がってくれる気もしますし。

――演出において、特に心掛けたことは?

 まず、自分たちスタッフが心地良いリズムで音のコンテを作っているので、それを基に「速い・遅い」のスピード感については指示しました。

 元々感情的なスクリプトなので、演技はできるだけフラットなものを求めました。

――本作でもサンダンス映画祭において、審査員特別賞オリジナリティ賞に輝き、日本人監督として初の快挙を果たしました。これは、やはり「アニメのテンポ感」と「古き良き日本映画」を合わせた“ネオジャパニーズ”という評価なのでしょうか?

 僕にとっては普通でも、アメリカ人にとっては“新たなジャンルを撮れる監督”と見られているようです。アニメはもともとエモーショナルですし、昔の日本映画も、じつはエネルギッシュで、カットも早かったりするんですよね。大島渚監督や新藤兼人監督、川島雄三監督などの実験的で情熱的な日本映画は。

 アニメなら『マインド・ゲーム』などのSTUDIO4℃作品や、最近なら「キルラキル」あたりの、スタイルにとらわれていない作品が好きですね。『ホーホケキョ となりの山田くん』も!

英語は苦手だけど
海外も視野に!


――今後も、会社員と映画監督の“二足のわらじ”を履かれるとのことですが、目標や展望などを教えてください。

 正直、映画監督として評価されることには困惑しているのですが(笑)、会社とは今後も上手く付き合っていきたいです。

 僕の映画って、シーンが多い分、予算がかかってしまうこともあり、日本で撮っているだけでは、自分が正しいと思うメッセージやトーンを守れないんです。ボリス・ヴィアンのように何にもとらわれずに、一貫した表現をし続けたい。だから、監督としては、海外に市場を広げながらも、メジャーになりすぎない表現を突き詰めていきたいと思います。

 アメリカで撮るという企画も、すでにいくつかいただいていますし、5年後には実現させたいです。そのためには、苦手な英語をなんとかしたいです(笑)。


長久 允(ながひさ・まこと)

1984年8月2日生まれ。東京都出身。CMプランナーとしての受賞歴に、TCC新人賞、OCC最高新人賞、カンヌ国際映画祭ヤングライオンFILM部門シルバーなど。17年、『そうして私たちはプールに金魚を、』が、サンダンス国際映画祭にて日本人初グランプリを受賞。長編デビュー作『WE ARE LITTLE ZOMBIES(ウィーアーリトルゾンビーズ)』では、日本映画として初めてサンダンス映画祭、第69回ベルリン国際映画祭、ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭の海外映画祭にて3冠を獲得した。


『WE ARE LITTLE ZOMBIES
(ウィーアーリトルゾンビーズ)』

火葬場で出会ったヒカリ(二宮慶多)、イシ(水野哲志)、タケムラ(奥村門土)、イクコ(中島セナ)は、両親を亡くしても泣けなかった。ゾンビのように感情を失った彼らは心を取り戻すため、誰もいないお互いの家を巡る。その後、バンド「LITTLE ZOMBIES」を結成した4人は社会現象を巻き起こす。
2019年6月14日(金)より全国公開
配給:日活
https://littlezombies.jp/
(C)2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS

くれい響 (くれい ひびき)

1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

文=くれい響
写真=松本輝一



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