2019/07/23 15:00

直木賞作家・中島京子が書きたかった 年齢差のある女たちの友情とは?

図書館の受難と女の人生が重なる
約150年の物語


今月のオススメ本
『夢見る帝国図書館』

 喜和子さんから、上野図書館が主人公の小説を書くよう頼まれた〈わたし〉。映画『ルージュの手紙』でカトリーヌ・ドヌーヴ演じる、風まかせで生きる自由闊達な女性がツボだという中島さんが一度書いてみたかったという、年齢差のある女性たちの友情物語でもある。
中島京子 文藝春秋 1,850円

「明治に始まり終戦でいったん役割を終える日本初の近代図書館の歴史と、喜和子さんという女性の謎めいた人生を現代から遡っていく個人史。二つの物語が、終戦後、帝国図書館が廃止されて国立国会図書館となるあたりで出合うようなイメージが最初にありました」

 中島京子さんの『夢見る帝国図書館』は、本や図書館を愛する人なら慈しむようにページを繰るに違いない傑作長篇だ。ライターで小説家志望の〈わたし〉は、歴史ある旧帝国図書館を敬愛する、奇抜な身なりの初老女性・喜和子さんとふとした出会いから親しくなる。やがて〈わたし〉は、図書館の小説を書き、喜和子さんの人生を解き明かしていく。

「国会図書館の支部図書館と呼ばれていたころは、私もそんな建物が上野にあるとは知りませんでした。国際こども図書館としてリニューアルされてから入ってみると、あまりに美しくて……」

 興味を引かれた中島さんが調べてみると、その変遷がわかってきた。

「国が文化にお金を出さないので、設計した建物の4分の1しか建てられなかった。その後も、戦争が起こるたびに予算を削られて。かわいそうでトホホな事情が如実に伝わってきて。この面白さを伝えたい、でもどうやったら楽しんでもらえるだろうと、語りについては腐心しました」

 かくて図書館を擬人化したユーモラスな文体で紡がれる作中作「夢見る帝国図書館」を差し挟み、喜和子さんをめぐるパートが進んでいく。

 図書館を指して〈あたしなんか、半分住んでたみたいなもの〉という喜和子さんの言葉の端々から、過去に何かありそうだとは察しがつく。

「喜和子さん自身はフィクションですが、彼女が生きた時間と空間は実在します。多くの体験が、語られず、誰にも知られず消え去るのだと思います。そうした歴史をふまえて創作をするときにはいつも逡巡します。今回も『喜和子さん、これでいいでしょうか』と問いかけながら書いていました。本を書く、読むといった行為は、その時代を生きていた人に思いを馳せる時間につながっているのかなと」

 作中には喜和子さんの人生をひもとくいくつかのヒントがあって、その一つが絵本『としょかんのこじ』。

「私が子どものころ大好きだった『雨の日文庫』というシリーズから連想しました。国会図書館にあるので、ちょっと見てきたのですが、私が記憶していたのと話が違う。『え、私、勝手に書き換えてたの?』と(笑)」


中島京子(なかじまきょうこ)

1964年東京都生まれ。東京女子大学卒業。出版社勤務を経て、 2003年『FUTON』でデビュー。10年『小さいおうち』で直木賞、14年『妻が椎茸だったころ』で泉鏡花文学賞を受賞。近著に『ゴースト』『樽とタタン』等著書多数。

文=三浦天紗子



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