2019/08/27 07:00

特別対談 近田春夫×矢野利裕 ジャニーズ事務所の今後はどうなる?

 2019年2月、近田春夫の綴る週刊文春の長寿連載「考えるヒット」から興味深い書籍が誕生した。

『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)。タイトル通り、ジャニーズ事務所に所属するアイドルたちの曲を扱った、神回ならぬ「ジャニ回」を抽出してまとめたスピンオフ的な一冊である。

 その出版を記念し、ジャニーズ事務所が60年近くにわたって生み出してきた音楽をめぐって1951年生まれの近田氏と語り合うのは、2016年に『ジャニーズと日本』(講談社現代新書)を上梓した1983年生まれの矢野利裕氏。

 32歳違いのトークをお楽しみあれ!


▼talk 05
伝統芸能としてのジャニーズ


左から、矢野利裕氏、近田春夫氏。ジャニーズを語らせたら止まらない二人である。

――『考えるヒット テーマはジャニーズ』には、ジャニーズのアイドルたちに関して《彼等は“踊り子”である》と書かれています。

近田 みんなやっぱり踊るのが好きな人たちだから。永田英二がフォーリーブスをやめて、青山孝が入ったじゃん。あの人は珍しく歌の人なんだけど、結局、彼が一番になった。そのことっていまだに何だったんだろうって思うよね。それと、やっぱり今も永田英二の存在はでかい気がするな。

矢野 ラッパーのECDさんも「永田英二には影響を受けた」と言っていました。

近田 俺、ジャニーズの曲で何が好きかっていったら、永田英二がソロになったときの「恋をあげよう」(1970年)だもん。あれは全ジャニーズ曲の中でいちばん好きだね。永田の声もいいけど、鈴木邦彦さんの曲がいいんだよ。若いころの永田英二は歌も踊りもジャニーズ随一だったと思う。

――矢野さんがいちばん好きな曲はどれですか?

矢野 Sexy Zoneの「Lady ダイヤモンド」(2012年)ですかね。馬飼野康二さんの曲なんですけど、声がほんと若々しくて。こんな若い男の子を見世物として自分は……でもいいんだよな……という背徳感とセットで(笑)。

近田 馬飼野さん、ジャニーズに合っているんだよね。いまだによく書いているもん。

矢野 昔の曲だったら、初代ジャニーズには好きなのがいっぱいありますね。

近田 いろんないい曲いっぱいあるけど、やっぱり「がんばりましょう」が好きだね。20年以上前だけど。あとあれ。修二と彰だよ。

――「青春アミーゴ」(2005年)。本でも絶賛されていますね。

近田 そう。北欧の人が作ったやつはすごいよね。

矢野 最近はNEWSがとてもいいです。この間コンサートに行ったんですけど、今アルバムもライブもすごくコンセプチュアルなんですよ。

 ひとつ前は宇宙旅行、今回はVRの世界みたいな。あれだけステージにお金がかかっていて、行けば曲を知らなくても楽しめるのはすごいです。この間のアルバム(『WORLDISTA』2019年)もすごくよかったし。

――僕は……って誰にも聞かれていませんけど(笑)、近田さんもカヴァーしていたフォーリーブスの「ブルドッグ」(1977年)が好きです。

近田 あれは名曲だよね。

矢野 「ブルドッグ」もずっと後輩が歌い続けていますよね。

近田 ジャニーズって歌い継いでいくのが面白いんだよね。伝統芸能だから。

郷ひろみの歌詞は「やり逃げ」?


矢野氏が触れているアソシエイションは、60年代後半に活躍したアメリカ西海岸のバンド。ソフトロックと呼ばれるジャンルの旗手とされ、日本では90年代の渋谷系の文脈において再評価を受けた。

矢野 最近だと、A.B.C-Zがアソシエイションの「Never My Love」をカバーしているんです。この曲は2019年4月に公開された『映画 少年たち』でも歌われているんです。昔、フォーリーブスもやっていたミュージカルの映画化ですね。

 けど、あの曲には因縁があるんですよね。もともと初代ジャニーズがアメリカのワーナーブラザーズと契約してあてがわれた曲なんだけど、アルバムがお蔵入りになって、アソシエイションが歌って全米1位の大ヒットになったという。そうして歴史の参照を求めるようにいろんな曲を配置しているところにも伝統を感じます。

――好きなグループやアーティストは? 近田さんはやっぱり永田英二さんですか?

近田 そうだね。もしフォーリーブスに永田があのままい続けていたら、ジャニーズ全体の流れも変わっていたんじゃないかなと、いまだに思うよ。

 あとはやっぱり郷ひろみだね。初期は本当にすごい曲が多いから。ジャニーズ時代の郷ひろみを超える曲っていまだにないんじゃないかと思うぐらい。筒美さんの曲もすごいし、岩谷時子、安井かずみの歌詞もとんでもないよ。女性の作詞家なのに、よくここまで男に都合のいいやり逃げみたいな詞を書けるものだっていう。

《さあ初めて二人に別れの日が来た/握手をしようよ/君の涙は見たくない/僕のまつげがぬれるから/レインコートを脱ぐように かるい気持で別れよう》(「愛への出発」1973年 作詞/岩谷時子 作曲/筒美京平)。ひどいでしょ?(笑)


近田春夫&ハルヲフォンとして郷の「恋の弱味」をカバーしていたり、郷主演のドラマ「ムー一族」にレギュラー出演していたりと、近田氏と郷ひろみとの縁は意外と深い。

矢野 僕は最近だったらNEWSの増田(貴久)くんが好きです。ライブで見たら歌い方が多彩で、この人は芸達者だなとびっくりして。昔の人だとトシちゃんも好きですね。歌声を聴いているだけで元気になるんですよ。リアルタイムでは中居くんがずっと好きだし、やっぱり明るい人が好きですね。

近田 トシちゃんはほんとに明るいよね。ある種の大物感があるよ、あの人には。何か考えているのか、何も考えていないのかわからないけど。

矢野 彼みたいな華のある人がディスコナンバーを歌っていたりすると、音楽ってこういうのがいちばんいいな、と思うんです。

 音楽を通して歌い手が考えていることを受け取るのもいいけど、小説でも評論でも同じことをやっているわけで、音楽にしか求め得ないものは何か、とか考えると、パーッと気分が晴れて「今日は疲れたけど明日も頑張ろう」と思えるとか、そういうことだったりするんですよ、僕にとっては。

 コンサートでも文字どおり別世界に連れて行ってもらって、日常に帰ってくるみたいな。

加齢という問題にどう立ち向かうか


上から、近田氏の著書『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)と『定本 気分は歌謡曲』(文藝春秋)、矢野氏の著書『ジャニーズと日本』(講談社現代新書)。

――未来の予想はできない、とお二人とも本に書いているのに言いにくいんですが(笑)、今後のジャニーズに関して何かありますか?

近田 最近思うのはさ、みんな長くやっていて、もう中年なわけじゃない。だから、どうやって年を取っていくのかというところはさ、ジャニーズ全体としてうまくやれたらいいよね。

 SMAPの人たちにしても嵐にしても、うんと若いころの感じのまま時間を止めていて、そのことがだんだんイタさになってきているようなところがある。全体にね。

 年の取り方に関しては、まだジャニーズとしての指針みたいなものができてない気がするんだよ。そのことがどこかですごく大きな問題になってくる気がする。

――昔はアイドルって今ほど長くやりませんでしたからね。

近田 どう年を取るかって芸能人にとっていちばん難しい問題なんだよ。若作りはイタくなっちゃうけど、かといって経年劣化していく姿を自然に見せても夢がなくなっちゃうだろうし。

 今のアイドルは、ジャニーズに限らず昔より賞味期限が長いからさ。40過ぎてアイドルということには無理があるんじゃないかというね。

 事務所の方針として、どうやってみんなに年を取らせるのか。俺がいちばん興味があるのはそこだね。

矢野 僕はずっとSMAPにそれを見ていたんですよ。アイドルとして輝きながら、いい感じに年を取っていくのかなと思っていて。それがああいった形で解散してしまったのは悲しい出来事でした。

 嵐がみんなで話し合って活動期限を2020年いっぱいに決めたというニュースには、「これが今の形か」と思いましたね。


今回の対談現場に持ち込まれた矢野氏の私物であるアナログレコードの数々。近田春夫&ハルヲフォン、近田春夫&ビブラトーンズ、プレジデントBPM、ビブラストーンなど、近田氏の長いキャリアを網羅している。

近田 ジャニーさん、ものすごく長生きすると思ったんだけどね。

矢野 どうしてもジャニーさんの美学が強すぎたから、先のことはわからないですよね。

近田 うん。本当にわからない。

矢野 『JOHNNYS' World -ジャニーズ・ワールド-』という、ジャニーさん自身を主役にしたような舞台を2012年からずっとやっていますけど、あれが本当に総決算的な作品なんだろうなって思います。

 ビジネスの枠組みとしては、ジャニーさん後の体制作りはしているんだろうけれども、今までと同じように続くかというと、客観的に見て難しいだろうなとは思っています。

――ジャニーズ・イコール・ジャニーさんであるということですね。

近田 それは確かだよね。

矢野 本当にそう思います。50年を超える歴史がありながら一切ブレがないというのはやっぱりすごいことですよね。


『考えるヒット テーマはジャニーズ』

著・近田春夫
本体1,600円+税 スモール出版


近田春夫(ちかだ はるお)

1951年東京都生まれ。75年に近田春夫&ハルヲフォンとしてデビュー。80年代以降はビブラトーンズなどを率いてバンド活動を続ける傍ら、タレント、ラジオDJ、作詞・作曲家、CM音楽作家など多彩に活躍する。86年にはプレジデントBPMを名乗って日本語ラップの先駆者となり、87年には人力ヒップホップバンドのビブラストーンを結成。96年からは週刊文春で「考えるヒット」を連載。現在は、元ハルヲフォンのメンバー3人による新バンド「活躍中」として活躍中。2018年10月には、ソロアルバム『超冗談だから』をリリース。12月には、OMBとのユニット、LUNASUNのアルバム『Organ Heaven』が発売された。


矢野利裕(やの としひろ)

1983年東京都生まれ。批評家、ライター、DJ。東京学芸大学大学院修士課程修了。2014年、「自分ならざる者を精一杯に生きる――町田康論」で第57回群像新人文学賞評論部門優秀作受賞。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸編『村上春樹と二十一世紀』(おうふう)、単著に『SMAPは終わらない 国民的グループが乗り越える「社会のしがらみ」』(垣内出版)、『コミックソングがJ-POPを作った 軽薄の音楽史』(Pヴァイン)がある。

構成=高岡洋詞
撮影=山元茂樹



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